明治20年に初代吉澤仁太郎が創業した「機那サフラン酒製造本舗」は、摂田屋の地
でサフラン酒を販売し、明治から昭和にかけて繁栄しました。
「機那サフラン酒製造本舗」には10の土蔵群があり、すべて国の登録有形文化財に
指定されています。
土日祝日の開放日には、「機那サフラン酒本舗保存を願う市民の会」の皆さまに
よるガイドで、鏝絵蔵や離れ座敷、錦鯉のいる池のある庭園の見学ができます。
訪れたのは、7月中旬の土曜日。
見学寄付金200円を支払って、10名ほどの方と一緒に、案内をしていただきました。
まずは、主屋の隣にある衣装蔵へ。
震災の影響で、壁の一部が、剥がれ落ちたりしていましたが、「土台は、建設当時
の130年位も前のままですが、びくともしなかったのですよ。」と、ガイドの方は、
誇らしげに、お話して下さいました。
今に残る「日本一の鏝絵蔵(こてえぐら)」に仕上げたのが、左官職人・河上伊吉
(かわかみいきち)。もとは、近所に住む商人で、酒・味噌・醤油・薪炭の行商を
していましたが、吉澤仁太郎さんから、依頼を受け、伊吉さんは、富山へ左官の
修行に出て、左官の技術を身につけると、仁太郎さんの元へ戻り、鏝絵蔵をはじめ、
吉澤家の13の建物づくりに携わったそうです。
この衣装蔵は、鏝絵蔵より、10年前に造られました。一階部分は、当時は、輸入品
で高級建材だった波形鉄板(トタン板)で覆われています。
土台には、風通しのための、通気口が造られていて、スライドして開閉できる造り
になっています。実際に、開閉してみましたが、結構重かったです。
ガイドの方は、片手でスイスイと動かしていたので、コツがあるようですね・・・。
庭の方へ進みます。
庭には、あちこちに、石が配置されています。
小山の様に積み上げられた石は、「鬼押し出し」から、運んできたものとのこと、
でした。
吉澤仁太郎が、自ら作成したと伝わる石灯籠が、庭に大小10基ほどあるとのこと。
池の中央には、これも「鬼押し出し」からの石でしょうか?ゴツゴツした石の上に
不動明王や龍などの石像が、乗せられていました。
庭園に面したところに、離れ座敷がありました。唐破風屋根の玄関が特徴的です。
中を見学出来るとのことで、案内していただきました。
豪奢な造りではありませんが、細部にこだわった造りになっていました。
ガラス戸には、割れにくいように、窓枠の隅に金具を取り付けた造りになって
います。
戸や飾りも洒落ています。
あえて曲がった木を使った床柱。
柿の渋を塗った欄間の飾り。
大理石の洗面所やトイレも凝っています。
今でも通用するような、洒落た感じもしました。
離れを見せていただいたので、次は、鏝絵蔵に行きます。
一階部分は海鼠壁(なまこかべ)、扉には、極彩色の「鏝絵(こてえ)」を施した
豪勢な蔵が目を惹きます。
軒下には、龍の鏝絵が、施されています。
龍は、よく見ると、髭が浮いたように立体的に造られています。鏝だけで、これを
造るとはすごい技術ですねー・・・。
蔵の北面の壁には、十二支をはじめとする14種類の動物や霊獣、9種類の植物を、
極彩色で描き出しています。
とても美しいです。
蔵に、こんなに沢山の窓をつけることは、普通ないのですが、鏝絵を施した「見せ
る壁」にしたくて、窓を増やしたようです。
平成18年11月に、国の登録有形文化財に指定されています。
ガイドの方から、丁寧な説明をして頂いて、違った角度から、機那サフラン酒製造
本舗を見ることが出来て、とても良かったと思います。
一見の価値があると思いますので、是非、訪れてみてはいかがでしょうか。
次回は、摂田屋周辺を散策したので、載せたいと思います。